方や、英霊を参拝することがなぜ政治的案件にならなければならないのか、そんなことまでいちいち諸外国のご機嫌を伺わなくてはならないのかという、理不尽な思い。
方や、参拝したはいいけれど、かつて批判していたはずの戦後レジームそのものの声明を出し、たとえ自衛でも日本人が戦争をすることは過去から未来にわたって罪であると認めてしまった首相。
参拝も自由にできない理不尽はあれど、しかしそこだけが残って、あとは全部形骸化どころか外堀を埋められてしまった格好。
これでは靖国神社が、そのまま「無宗教の慰霊施設」とやらになってしまったのと変わらない・・・とは言いすぎにしても、英霊の側面を完全否定した上での参拝であることはたしか。
かつて道場に安倍晋三氏がゲストに予定されている時、私は氏の著書『美しい国へ』を下準備で読みました。
そこには戦後レジームの否定が掲げられていたけれど、対米従属にはなんら疑問が呈されておらず、むしろ積極的に必要なことと書かれてありました。
私はそこに疑問を抱きました。
対米関係を射程に入れない戦後レジームなど、存在するのか。
それは国内問題だけ切り離して論議する、片肺飛行ではないのか。
ゲストに来られた時、対米関係と戦後レジームの否定との相関関係については、ぜひ伺ってみたく思っていました。
それが震災で実現せず、はや幾年月。
「美しい日本」を汚すのは誰なのか、訊くまでもなく答えが出てしまっているようで、怖いです。
問題なのは、今回の件、リベラル派は「安倍が戦争を起こそうとしている」の一点張りで、自称保守派は「安倍晋三よくやってくれた」のマンセー状態一点張り。
実際はどちらも、もうひとつの危機意識を持ち得ていない。
それは靖国神社を国内政治パフォーマンスの「政治利用」としてしか考えていない首相と見合った現実認識なのかなと思います。
しかし現実の基盤は、自分たちが思っているより脆い。